水槽の中をゆっくりと泳ぐ、2匹のピラルクを眺めていた。

金曜日。
朝10時頃起きる。昨夜は3時くらいまで本を読んでいて、そのまま寝てしまった。部屋の明かりもつけっぱなしだった。遅くまで起きていたせいか、寝る前まで、蚊が多かった気がする。腕や足首の辺りなど、けっこう刺されててかゆい。ここの宿も、始めは古くさくて、少し汚いかなと思ったりしたけど、今や顔なじみの人たちも出来たり、シャワー室近くに、陽が良く当たる中庭があって、洗濯物もすぐ乾いて便利だし、すっかり居心地が良くなってきている。

出発日を来週の水曜日に延ばしたので、あと6日マナウスにゆっくり滞在できる。1日、2日で移動した町もあったけど、基本的には1つの場所でゆっくり
滞在したい。マアウスに来る機会もそうそうなさそうなので。

シャワーを浴び、前から気になっていたアマゾン自然科学博物館 (Museu de Ciencias Naturais da Amazonia)へ行くことにする。外はもうかなり暑い。セントロでバスを待っていると、

目の前に、犬を連れているおじさんが座った。何気なく彼らを見てると、そのおじさんは、アイスを1つ買い、犬になめさせた。・・美味しそうに舐め始める犬。・・いくら犬好きでも犬に舐めさせて、その後たべるのかなぁ?
なんて思いながら見ていると最後まで犬に舐めさせてた。

博物館で展示物を見て、水族館エリアに入る。先日市場で食べた魚、タンバキもいる。
最後にピラルクを見る。大きな水槽に2匹、底の方にいる。ぴくりとも動かなかったので、係りの人に尋ねると、長い棒で突付いてくれた。せっかく眠っていたのに起こして悪かったけど。

しばらくの間、ゆっくりと、悠々と寄り添って泳ぐ、2匹のピラルクを時間を忘れて、眺めていた。とても美しかった。


その水槽には、
他の魚が泳いでいる訳ではなかったし、水草や石などといった物もなかった。ただ、水で満たされているコンクリートの水槽だった。だけど
どういう訳か、それでいっそう美しさが増している様に思った。

次の水曜日まで。

木曜日。
朝食をたべながら(今日のフルーツはスイカだった)考える。明日、金曜に船に乗るかどうか。もし乗るなら今日、チケット買ったり、ハンモック買ったり準備しなければならない。そしてマナウス在住の日系の方にお会いできるなら今晩か、明日の午前中となる・・。
朝食後、その方に電話するが、つながらない。
テレフォンカードを買って、それを使って電話しているのだけど、つながらないにも関わらず、
使用可能限度が、どんどん減っている。すでに、20R(約1000円)ほど使ってしまった。どういう事か、まったく分からない・・!
ここの宿には英語を話せる人が、おらず、拙いポルトガル語で訊いても、理解してもらえない。困った。恐らく、テレフォンカードが違う?か、市外局番とか、
そういう事?先方からは、昨夜送ったメール(このホテルの名前、住所と電話番号も書いた)に返事が来ていたのだけど・・。
前もって電話して下さい、とだけ書いてあった。宿でイライラしていても
しょうがないので、宿の人に、先方から電話があれば伝言を聞いといてと、頼み、外出する。町を歩くと少し気が紛れる。ここ2日ほど電話の事で少しイライラしていたけど、それは次の船が出る、金曜日までにお会いしたいと思っていたからだ。ふと、もう会うのを止めにしようと思った。もっと前もって連絡しておけばよかったのだけど・・。後でメールでその旨を伝えよう。お話を伺えないのは、残念だけど・・。
折角、リラックスするために旅をしてるのにイライラしてたら
意味がないので。そしたら、このままこの町から明日離れるのはもったいない気がして来た。明日、出発するのも止めよう。次の水曜まで、ゆっくりしよう。
とりあえずビールを飲みに行って、ゆっくりと時間を使おう。

港の散歩、夜の焼き鳥屋

朝9時に目覚め、シャワーを浴びる。ここの宿は朝食付き。
パン、ビスケット、オムレツ、コーヒー、パパイヤなど。

今日は水曜日。町をブラブラしながら歩いてると港へ出た。

船乗り場の所にも食堂がある。

そういえばマナウスからべレン行きは水曜、金曜しかないらしい。
サンパウロで紹介されたマナウス在住の日系の方に電話をするがつながらない。

時間をおいて再度電話するが、やはりつながらない。
出発までにお会いして、いろいろとマナウスの話を聞きたいのだけど。


ハンモック屋を覗いてみる。船にはハンモックを吊るす場所があるだけで、
自分たちで事前に買うらしい。
何軒かハンモック屋で見せてもらう。いろいろ見てると段々と相場が分かってくる。
だけど、いまのところ、なかなか欲しい物がない。
すぐに急いで買う必要がないので今日のところはこの辺にする。


一日中、歩いてると町にも馴れてきて、夜でもブラブラ出歩く様になった。

日が暮れてくると、路上に焼き鳥屋が出始め、おっちゃん達も集まってくる。
これは違う場所の焼き鳥屋だけど、だいたいこんな感じ。鶏肉、牛肉、マナウスでは焼き魚もある。
宿の近く、道路の角にある焼き鳥屋で飲み始める。小さい子供の手を引いた、お母さんが通り過ぎて行く。・・アマゾンまで来てみたけれど・・、とりあえず旅の間は、荷物やお金を取られないようにするとか、危ない目に遭わないようにとか当座の心配だけをして無事に帰国できる事を考えてればいい、けど・・。
帰国した後の事を考える。・・考えなくてもいい状況で、考えなければならない事を、考えてもうまくいかない。

ハンモッックに揺られながら、小さい頃を思い出す

木曜日・乗船2日目

朝食はコーヒー、パン、目玉焼き、ハム、りんご。

昨夜は寝ている場所の近くにある売店で、遅くまで家族連れの旅行者や地元のおっちゃん達が飲んでいて、その周りを子供たちが走ったり、遊んでいた。2時近くまで大音量でテレビをつけてたけど、いまや何処でも寝る事が出来る体質になっているのでなんともない。
むしろ、楽しそうに騒いでいるのを聞きながら、こっちも安心して眠れた。小さい頃、親戚の人たちが集まっていた風景を思い出した。あの頃に戻りたいとは思わないけど、会っていろんな事を話してみたい。





ここは2階の食堂。クーラー付き。














ここは1階の食堂。クーラーが付いていないけどこちらの方が好み。風が入ってくるし。長椅子に大勢で食べられるし。昨夜の夕食はここで食べた。だけど食べ終えると次からは上の食堂で食事して下さいと言われる。チケットの料金で場所が違うらしい。ちなみに昨夜は船長の隣りに座り、機関士の人達と一緒に食べた。食堂の見た目は1階と2階ではまるで違うけど、料理している1階と2階のおばちゃん達は一様に肉付きが良く、まるまると太っていた。

いよいよマナウスを発つ。

水曜日・乗船1日目


前日チケットを買った後、今日の3時頃またここへ来てくれと言われていたので切符売り場へ向かう。チケットを買ったあの、おっちゃんがいなかったので、もしかして!?と思ったが別のスタッフが誘導してくれる。

すでに大勢の人が乗っている。ハンモックを張る場所は早い者勝ちなので
急いで乗り込む。なんとか場所を確保。







船のデッキから離れてゆくマナウスの町を見る。しばらくこの町にも来ないのだろうなと思う。
もし来ることがあるとすれば、その時は何歳ぐらいになって、どのような暮らしをしているのだろう。
前に会った旅行者は”私は旅というか、移動が好きなんです”と云っていたけど、確かにそれも一理あるなと思う。移動−行くまでの楽しみや、それだけに集中してればいいというのもあるし、ここから、どこかへ、まだ見ず場所へ出発するというのはいつでも何か面白そうな事が起こりそうでワクワクする。


デッキ後方から見た
客室部。ハンモックは期待していた通り以外と快適。隣の人とも、聞いていたほど近くない。船が走っているからか、川の上だからか、蚊もほとんど寄ってこない。

出発前日、バカリャウ(干し鱈)を食べてチケットを買う。

火曜日。

ここの宿はユースホステルで、前の宿と比べると食堂が広く、朝食時には他の国の旅行者と一緒に話せるのが楽しい。前の宿はほとんどがブラジル人で、働いている人もポルトガル語と、ほんの少しスペイン語が分かる程度だった。(他の南米の国を周った後だったので少しスペイン語が話せたが、彼らとは残念ながら、ほとんど通じなかった。)

食堂で席が隣りだった、ペルーから来ている親子(母親と女の子2人)と話した。女の子は10代ぐらい。その親子はサンパウロでペルー料理のレストランをこれから始めるらしく、その前の休暇らしい。(その後、街中でこの母親と偶然会い、話を聞いていると、彼女自身、あまりブラジルに行きたくないそうで、娘2人と最近、喧嘩ばかりしているらしい。−確かに生意気そうだったけど−
ただ話しを聞いていただけだったけど、彼女もまた誰かにただ話を聞いてもらいたかったのだろう。

食堂の上の階にあるテラスで、ハンモックに寝て本を読む。屋根が付いているので直接陽が差さず、爽やかな風が吹き抜けていて、気持ちがいい。


昼食を食べに宿を出る。町を散歩していると食堂にバカリャウの文字が。
以前ポルトガルを旅していたとき、食べ損ねたので入ってみる。量り売りの店で、いつも食べている市場の食堂よりも2倍くらい高い。食事をしているお客さんも、ちゃんと靴を履いている人やワイシャツを着ている人達。
−みんな美味しそうにたべているなぁ。







いよいよ明日出発するのでハンモックとチケットを買いに行く。
チケット売り場は港の桟橋近くに何軒かある。ビーチパラソルを立てて、机と椅子があるだけ。このおっちゃんに決める。直感で信用出来そうだった。その人の目や
雰囲気を1つの目安にしてきた。だけど、これは”信用出来そう”よりも
”自分が好感を持てる”に近い気がする。”自分が好感を持てる人”
なので”信用出来そう”ということなのか・・。

ジーコは神か、否か?

月曜日。
ワールドカップがあったからか、商店街にはブラジルカラーの緑と黄色のテープが張られている。

ブラジルでは国旗はとても身近なもので、道路にペイントされてたり、レストランに飾ってあったり、マンションのベランダから下げてあったりまた、国旗のデザインのTシャツを着ている人もよく町で見かける。

日本では道路に日の丸をペイントする人もいないし、寿司屋とかにも国旗は飾ってないし、マンションのベランダから日の丸を下げてあったりもしないし、(70年代前半の九州では祭日などに家の前に日の丸を飾ってある家が多かった。今は、あまり見かけない風景)
日の丸のTシャツを普段着として着ている人は見たことないし、聞いたこともない。
サッカーやオリンピックなどの国際大会中には見るけど・・。
(それは特別というか無礼講みたいな感じだから許される・・と思っている。)
日の丸を使ってもいいけど、それは敬うものだから(畏れ多いから)滅多に、(普段は)使ってはいけないという暗黙の了解があるように思える。
だけど、そういうものじゃなくて、このブラジルの人達は、国旗と身近に接していて、単純に良いな(羨ましいな)と思った。

    あるブラジル人に、ジーコ(日本でも活躍したサッカー選手、後に日本代表監督)は、日本では  ”神様”と紹介されるけど、ブラジルでは?と訊くと笑われてしまった・・。
年配の人だったからか、やはりNo.1はペレだと。彼の称号は
王様を表す”REY”(発音はヘイ)。じゃあ”神様”は?と訊くと・・
(ブラジルはカトリック信者が多いので)
”神様はたった1人だよ”と笑って答えてくれた。